新たに作った下の総入れ歯がプカプカ浮き上がってしまって、入れ歯安定剤を入れないと全く食事が出来ません。どうすれば宜しいでしょうか?
入れ歯治療を行っている南浦和の歯医者さん、くろさき歯科です。今回は「新たに作った下の総入れ歯がプカプカ浮き上がってしまって、入れ歯安定剤を入れないと全く食事が出来ません。どうすれば宜しいでしょうか?」という質問について詳しくお答えしていきたいと思います。
Contents
下の総入れ歯が浮き上がってしまう場合、考えられる原因
下の総入れ歯は、粘膜との密着する面積が狭く、内側に動き回る舌が存在するため、ぴったりと吸着するような入れ歯を作るのは非常に難しいと言われています。
浮き上がってしまう一番の原因は、舌と舌の周囲の筋肉が、入れ歯を無意識のうちに押し上げてしまう事です。舌の筋力はとても強いので、簡単に押し上がってしまいます。
その他には、噛み合わせのズレや、入れ歯の形態も関係していると考えられます。
対処法
下の総入れ歯を使いこなすためには、「舌の動き」や「噛み方」に注意する事が必要です。総入れ歯になる前の口の動かし方から、“入れ歯を使いこなすための動かし方”に変えていく必要があります。また、入れ歯の噛み合わせを調節する事で、噛み癖を改善する方法も同時に行っていく必要があります。
舌の動きと噛み方を改善させる
舌を好きなように動かしたり、口を開ける時に舌をひく動きをすると、下の入れ歯はすぐに外れてしまいます。次のポイントを心がけて、習慣にしていきましょう。
a. 舌の動きのポイント
口を開ける時には、舌先を持ち上げたり、引っ込めたりせずに、下の前歯の裏側付近に押し付けるようにします。この時に、舌の左右両側も、入れ歯の左右両側に押し付けるようなイメージで行うと良いでしょう。
b. 噛み方のポイント
「片側噛み」をしないようにしましょう。入れ歯の場合は、左右両方で同時に噛む「両側噛み」が基本です。片側で噛む癖があると、入れ歯が浮き上がってしまいます。
入れ歯の修正/調整を行う
噛み合わせが合っていないと、下の入れ歯をずらしてしまうような「噛み癖」が習慣になってしまう事があります。噛み合わせを何回かに分けて調整し、入れ歯の正しい噛み方ができるように改善していきます。
同時に、噛み合わせ以外に、入れ歯の床(しょう)部分もチェックし、必要であれば修正/調整を行います。
安定しやすい入れ歯の作り替え
入れ歯は、作ってすぐには合うようになりません。徐々に慣らして、自分に合う入れ歯にしていくものです。まずは、上記(1)(2)の方法を行って様子を見ていくのが良いですが、なかなか状態が改善しない場合には、安定しやすい入れ歯に作り変える方法を検討するのも一つです。
・安定しやすい精密な入れ歯
ここでいう“安定しやすい入れ歯”とは、精密に型取りし設計する事ができる自費の入れ歯です。保険適用の入れ歯の場合、製作方法や設計にかける時間に制限があるため、ぴったりフィットする入れ歯を作りにくいというデメリットがあります。どうしても入れ歯が合わない場合には、自費の入れ歯も検討するのも良いかもしれません。ただし、下の総入れ歯が浮き上がってしまう原因に、舌の動きや噛み方が関係している場合には、入れ歯を変えただけでは、状況が改善しないこともあります。歯科医師とよく相談して、作り替えを検討するのが良いでしょう。
入れ歯安定剤の使用について
入れ歯安定剤を使用すると、入れ歯と歯ぐきが安定剤を介して接着されて、一時的な安定感を得る事ができます。下の総入れ歯が浮いてしまう事が気になる場合、入れ歯安定剤は効果的です。しかし、入れ歯安定剤は、あくまで入れ歯の不調を補うための一時しのぎに過ぎません。使用しすぎると歯ぐきや入れ歯に悪影響が出てしまう可能性があります。具体的には次の通りです。
歯ぐきの退縮
入れ歯安定剤は、入れ歯と歯ぐきの間に入ります。入れ歯安定剤にばかり頼っていると、歯ぐきや顎の骨に必要な適度な刺激が伝わらなくなるため、歯ぐきが痩せて退縮してしまうことがあります。
歯ぐきが退縮してしまうと、入れ歯がさらにフィットしにくくなる可能性があり、悪循環に陥ってしまう可能性があります。
入れ歯の修理が難しくなる
入れ歯安定剤を繰り返し使用していると、修理をしようとした時に、安定剤が入れ歯にこびりついて修理しにくくなってしまう事があります。場合によっては、作り替えないといけない事もあります。
また、常に安定剤に頼っていると、入れ歯の不適合を見落として、修理を先送りにしてしまう危険もありますので注意が必要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。下の総入れ歯が浮き上がってしまうのには、舌と舌の周囲の筋肉が、入れ歯を無意識のうちに押し上げてしまう事、噛み方や噛み合わせのズレ、入れ歯の形態が関係しています。舌の動きや噛み方の改善、入れ歯の修正/調整によって、状況を改善させる事ができる場合があります。歯科医師と相談しながら、自分に合う入れ歯にしていきましょう。